大企業法務からスタートアップの法務への転身 #裏LegalAC

このエントリーは「裏 法務系 Advent Calendar 2020」の19日目の記事として投稿されたものです。

うどっぴさんからバトンをいただきました!

 

自己紹介

このブログ初のエントリーでもあるので、簡単に自己紹介を。

私は新卒1年目から2019年まで、従業員5000人以上の大企業の法務として10年以上勤務していました。メイン業務は契約書のドラフティング、それ以外に株主総会、訴訟対応などもやっていました。
そこから夫がアメリカに駐在することになり、帯同するため退職して渡米。アメリカでは主婦業の傍ら友人が経営しているスタートアップの法務をお手伝いをしていました。

アメリカではコロナでほとんど外出できなかったのもあり、この一年でザンギを揚げるのとターキー、(ポーターハウス)ステーキを焼くのはうまくなったと思います(そこなのか)。

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あと昨年の #裏LeaglAC でmiraisaaanさんが投稿した法務がざわつくハンバーグは何度もリピートさせていただきました!アメリカの1ポンドひき肉が余裕で消費できるレシピはありがたかったですw

go-opro.hatenablog.com

 

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そんなこんなで大企業に勤務していた私が駐妻しつつスタートアップの法務をやることになって感じたことをこのエントリーにまとめていきたいと思います。

大企業法務とスタートアップ法務のギャップ

 (1)大企業にいたときの方が修正交渉が楽

これは法務に限らず、多くの大企業→スタートアップへのキャリアチェンジをしている方が感じられることかと思います。私も大企業にいたときは自分の会社のひな型が(条件が当社に有利という点はともかくとして)法的に正しいという自負はありましたし、必要な修正は説明すれば通ると思っていました。

しかし、スタートアップとしての取引となったとき、必要な修正と思っても通らない、当社の事業上譲れない点に関しても中々理解されず、折衷案の提示もないという場面に遭遇することが多くなりました。
また、相手方側のドラフトの提示がそもそも遅く(※とはいえ前職は契約交渉の時間に余裕を持つようにしていましたし、余裕をもっている会社さんもいらっしゃるので会社次第だと思います)、なるべく修正を減らす必要がでてくる=大企業だった頃以上に、この文言はそのまま受け入れても支障ないか?を突き詰めて検討しなければならなくなるということも増えたと感じています。

私が迷ったときは同僚の意見を聞きたい派なので、このあたりは未だにしんどいところです・・・

 

 

ちなみにこのあたりの話は、#LegalAC のにょんたかさんのエントリーも理解の一助になると思いますのでこちらもぜひご覧ください。

note.com

 

(2)スタートアップ企業の顧問弁護士のクオリティにはかなりばらつきがある

スタートアップ同士の契約というのももちろんあります。当社は対法人については受託者側となる取引が多いので、先方のひな型を軸に契約交渉をすることが多いのですが、その際にクオリティの低い契約書が出てくることがあります。

なお、ここでいうクオリティの低さとは、法的な正誤ではなく、取引にあっていないというものです(さすがに法的に間違っている契約書というのは見たことありません)。おそらく個別の取引内容を依頼者から聞いていないのでしょう、事務所のひな型と思われる契約書がそのまま送られてくるというケースがあり、今回の取引内容と合っていない(のにこれでどれだけの顧問料もらっているんだとry)ことに憤りを覚えることもあります。

先日Twitterで、スタートアップこそ法務にはお金をかけるべき、というツイートがありましたが、ただ弁護士と顧問契約を締結すればよいものではない、という点も広く周知されてほしいです。

法務のいないスタートアップでそれを見極めるのは難しいですが、スタートアップの経営者の方におかれましては、取引先から修正依頼が来たときに真摯に受け止め、自社が置かれている立場や知財戦略を真に踏まえた契約書を作ってもらえてるか?という点を気にかけていただけたら、と切に願います (法務向けのコメントじゃなくなってしまった・・・)。

 

(3)スタートアップ法務は大企業以上になんでも屋

大企業の場合、法務以外に総務や税務、人事があり、例えば登記周りや取締役会、株主総会の運営は総務、税法関係は税務、人事労務関係(労働訴訟含む)は人事、というように法務以外の部門が法務に関連する業務を担当していることがあります。法務という観点で言えば、私の勤めていた会社では、法務とは別に知財があったので、私も前職の際には知財の出願実務はやったことがありませんでした。

しかし当社には常勤のバックオフィス系の人材はおらず(私も時差の関係でフルタイムとは言い難い)、少しでも法律に関係しているものはすべて私がやる必要があり、これは一変しました。

もちろん一人法務はなんでも担当しているという話は聞いたことがあったのですが、人事労務周りの法務を自力でやるとここまで大変とは・・・。

スタートアップの法務でよかったこと

 Hardな側面ばかり書いてきましたが、スタートアップの法務が経験できてよかったなと思うところもあります。

一つは、自分で何でもやらなければならなくなったため、今まで以上に勉強することになり、調べものがうまくなったこと。また大企業にいたら一切関わることのなかった人事・労務系の法律に携わる機会を持てたのは、今後のキャリアに幅を持たせるというお意味では貴重な経験でした。

二つ目に、スタートアップの場合、副業が許可されていたり、社外活動への理解がある会社が多く、中には書籍を書かれている方もいらっしゃいます。そういった活動が自由にできるのも良い点かなと思います。
私もアメリカ滞在中にこちらの書籍の法務面のチェックに少しだけ関わらせていただいたのですが、良い経験となりました。(日本語で書かれたデザインリサーチの解説書ってないので、興味のある方はぜひ!)

www.bnn.co.jp

 

 初手が大企業法務でよかったこと

一方で、では最初に入社した企業がスタートアップが良かったかというと、私の場合は大企業でよかったと思っています。

一番大きな点としては、事業範囲が広く、様々な事業に関する契約書や訴訟に触れる機会があったことです(訴訟は起きてほしくないことですが)。特に私が在籍していた時は、法改正に伴いひな形のブラッシュアップをしていた過渡期だったのもあって、上司・先輩の意見を聞きつつ、考え学んでいくということができたことが、今の私の基礎となっています。

また会社によりますが、英語、法律関係セミナー等の研修制度が厚く、若い頃に独学では限界がある部分について学ぶ機会が得られたというのも、予算に余裕のある大企業ならではです。あと単純な話、書籍予算が多めに取られているって素晴らしいです笑

あとは業界団体や同僚等で多くの法務関係の人との繋がりが得られること。実はこの #裏LegalAC を書くに至ったのも、元を辿れば前職つながりの10ruさんががいろんな方を紹介してくださったことがきっかけ(な気がする)ですし、公私共に今の自分の繋がりの大部分は前職あってのものだと思っています。

おわりに

長々と書いてきましたが、実は夫が帰任することになったため、また来年からは新たなキャリアを踏み出すことになります。

次は大企業にいくかスタートアップに行くかは未定ですが、これまでの経験を踏まえて良いご縁に出会えるといいなと思っております。

 

それでは皆さん良いクリスマス&良いお年を!

Happy holidays and best wishes for the New Year!

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次のアドベントカレンダーはクロトワさんです!